「シニア向け分譲マンション」の選び方
なぜ今、関心が高まっているのか?
人生100年時代の到来で、「シニア向け分譲マンション」への関心が高まってきています。
「シニア向け分譲マンション」は、1970年代前半頃、熱海市内に相次いで建てられたのが始まりとされています。当時は、定年退職で第一線を退いた人たちに向けて、のんびり余生を楽しむ住まいとして企画されました。
しかし、時代は変わり、今では趣味や消費を意欲的に楽しみ、どんどん街に出ていくアクティブシニアが増えています。
総務省の調査では、2030年の時点で65歳以上の高齢者の約8割が介護を不要とし、自立的に暮らしていると予測されています(総務省「ICT超高齢社会構想会議報告書:みずほコーポレート銀行産業調査部 日本産業の中期展望〈平成24年〉」より)。
今どきの「シニア向け分譲マンション」は、このような元気なシニア層をターゲットにしたものが多く、都心部の便利な立地に建てられる物件が増えてきています。
どんなものなのか、他の高齢者向け住宅とも比較しつつ、特徴や購入時の注意点などを見てみましょう。
「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者住宅」とはどう違う?
「シニア向け分譲マンション」は、よく「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」と混同されがちです。それぞれの違いとは?
●シニア向け分譲マンション
位置づけは一般的な分譲マンションと同様です。つまり、売買契約を結んで購入し、「所有権」を得ます。住宅ローンも活用でき、住戸内のリフォームや設備交換なども可能。売却や賃貸、相続もできます。
「シニア向け」とうたっていますが、ほとんどの場合、購入者の年齢条件はありません(一部例外もあり)。
●有料老人ホーム
入所時の契約は「利用権契約」で、権利は一代限りで終了。権利の譲渡や室内のリフォームなどはできません。多くの場合、入所には年齢条件(60歳以上、65歳以上など)があります。
●サービス付き高齢者住宅
介護不要の元気で自立した高齢者向けの「賃貸住宅」です。見守りや生活相談などのサービスが付いています。
「シニア向け分譲マンション」のメリット
「シニア向け分譲マンション」の魅力は、何と言っても日常生活をより快適、便利にするための設備やサービスが充実していることです。一例を挙げてみましょう。
・室内や共用部がバリアフリー仕様
・充実した共用施設(大浴場、温泉、プール、ジム、図書室、レストラン、カラオケルーム、ゲストルームなど)
・見守りサービス、コンシェルジュサービス
・室内清掃サービス、家事サービス、食事サービス
・医療機関と提携。医師、歯科医、鍼灸師などの訪問診療を受けられる
・緊急時の24時間往診対応、電話相談を実施
「シニア向け分譲マンション」のデメリット
最も大きなデメリットは価格が高額なことです。共用施設やサービスが充実していることもあり、数千万円から数億円のケースもあります。月々の管理費も高めです。
●介護サービスは外部に依頼
あくまでも分譲マンションであり、介護や医療を直接提供するサービスは付いていません。将来、要介護となった場合は外部の介護事業者に依頼する必要があります。
●再度、住み替えが必要なケースも
将来要介護になり、適切なサービスを受けるために有料老人ホームなどへの住み替えが必要になることもあり得ます。
●資産価値は未知数
「シニア向け分譲マンション」の歴史は浅く売買事例が少ないため、売却する際の資産価値については未知数の部分があります。
購入時の注意点
「シニア向け分譲マンション」は、健康で経済的にゆとりのある人が購入するケースが多く見られます。しかし、今は健康でも年齢とともに要介護や認知症になる可能性もないとは言えません。
将来のリスクに備えて、購入の際は次の点を確認しましょう。
・急病などの緊急時、マンションでの対応はどうなっているか?
・(提携医療機関がある場合)医療の質について確認
・居住しながら受けられる介護や医療サービスは?
・車いすでの移動はスムーズにできるか?
・管理費や修繕積立金、固定資産税を払い続けることができるか?
「シニア向け分譲マンション」は現時点ではまだ戸数が少ないため、具体的なイメージが湧きにくいと言えます。興味がある方は不動産会社に様子を聞いたり見学したりして、早めに知っておくとよいでしょう。