中古市場活性化に向けた法改正と、住宅購入への影響
欧米に比べて、日本は飛び抜けた「新築偏重」の国
日本の中古住宅流通比率はアメリカの2割以下
日本では長い間、圧倒的な「新築人気」が続いています。
日本の「中古住宅の流通」がいかに少ないかを示す国際比較データがあります。売買さる住宅のうち、中古が占める割合はわずか14.7%に止まっています。それに対してイギリス88%、アメリカ83.1%、フランス68.4%と、その差は歴然です。欧米では圧倒的に新築より中古が人気なのです。
少子高齢化による人口減少で空き家が増加するなか、私たち日本人は意識を大きく転換する必要がありそうです。国は住宅に対する価値観を「新しいほど良い」から、「よいものをつくって、きちんと手入れして、長く使う」へと舵を切り替え、法改正を行いました。今、住宅政策は大きく変わろうとしています。
「宅地建物取引業法」改正の狙いとは?
消費者として、品質が不確かなものは買いたくありません。何十年もローンを払い続けるマイホームであればなおさらです。
これまで、家の品質を知ることはむずかしく、特に中古住宅は劣化が心配なことから新築に魅力を感じる人が大多数だったと言えます。そのような状況を改善するため、国が行ったのが「宅地建物取引業法」の一部改正です(平成28年2月28日法案閣議決定)。これによって、中古住宅を購入する際、劣化具合などの情報を確認して購入できることを目指しています。
不動産会社に義務付けられることとは
不動産会社は売主・買主に、以下の情報を提供することが義務となります。
・媒介契約締結時
売主にインスペクション(住宅診断)を実施したかどうかを確認し、売主が希望した場合は業者をあっせんする(インスペクションの促進)
・重要事項説明時
買主に物件のインスペクションの結果を説明する(質の確認)
・売買契約締結時
基礎、外壁などの現況を売主・買主に確認させ、確認した内容を双方に書面で交付する(状態を把握した上で購入する)
法改正後、買主は売買契約を結ぶ前に、購入する住宅のインスペクションの結果(建物の基礎や外壁のひび割れ、雨漏りなどの劣化状況、不具合の状況など)を聞くことができ、品質を知って購入の最終判断ができるようになります。
法改正で、住宅市場はどう変わる?
今回の法改正に先立ち、国は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を公表しました(平成26年3月)。
大きなポイントは、これまで築年数によって一律に評価額が減価され、約20年で価値はゼロとされていた評価方法を改め、建物の性能やリフォームの状況などを反映して評価するという点です。
この指針をふまえて、公益財団法人不動産流通推進センターが「既存住宅価格査定マニュアル」を改訂しました(平成27年7月31日)。
今後、きちんと手入れした住宅が高く評価されることで、質の良い中古住宅が多数市場に出回るようになると期待されます。
法的環境が整うことで、住宅購入者の意識は従来の「新築が一番」から、今後は「より質の良い中古住宅を見つける」ことに移行していく時代に入ったといえそうです。
将来住み替えを視野に入れている人は、欧米のように購入後も熱心にメンテナンスを行うようになるかもしれません。